嘘なら数えきれないくらいついていて、だからってその嘘は必要のないものだと言うわけでもなく生業としているところのものではあるんだけど、まあとにかく今まで碌な嘘はついてきた試しはない。
寧ろ他人から嫌悪される嘘。
だけれど、自軍の、しかも末端の何も知らないような者たちが特に有難がるような嘘。
この口から零れた嘘で一体どれほどの人間を闇に葬ったのだろう。
自軍を護り、被害を最小限に留めようとひねり出した一つの策ではあるが、その齎した災厄には限りがない。
それ以上の策があったのかと問われれば否。あの時々の状況で、自分が艦を預かる者として取り得る判断はあれしかなく、また遠く過去になった今でも思い出せばあの策しか見いだせないのもまた事実だった。
軍師、ひいては戦術予報士としての職務として問題はない。
でもあれは人としてどうだったのだろう。
疑問に立ち返ったとき、全ては否定として溢れ出る。その問いも勿論否だった。
しかし、その選んだ結末も間違いではない。自分はあの時、あの頃の自分の精一杯で選択したのだ。
痛みはあるけれど、後悔はない。
さて、現実を振り返ってみるとアナログな月めくりのカレンダーは四月を指し示していた。別れの頃を過ぎ、出会いや初出の季節だ。地上のある温暖な地帯では木々が芽吹いているかもしれない。
そんな穏やかな季節の始まりを告げる月の初めには赤い字で、ある単語が記されていた。
エイプリルフール。
一方で四月馬鹿と呼ばれるその一日は、嘘をついても無条件に許される日だ。大げさな嘘ではなくて小さな、すぐにそれと分かるような嘘を、多くの人はついて笑いあう。
そんな優しい、楽しい嘘を今まで自分はついたことがあっただろうか。
数瞬の自問。自答はない、と短く引き出された。
だったら、今日初めてそんな嘘を。
彼が嘘だと知っても笑って許してくれるような、そんな嘘を。
以前よりは柔和になったが、まだまだ難しい顔を見せることが多い彼の顔を思い浮かべて少し笑う。
少しだけ笑ってくれればいいな。
腰までゆうに届く長い黒髪を払って、は部屋を後にした。
歩き出せば狭いトレミーのこと、標的になる人間にはあっさりと出会えてしまう。自室を出てからわずかの距離にいた艦内一背の高い男、アレルヤ・ハプティズムをすぐさま確保した。
アレルヤはうわあとか何とか間の抜けた声で驚いて後ずさったが、折れそうな細い腕に捕獲されてしまっては無理に振りほどくことも出来ずに、困ったように眉をハの字に下げた。
「どうしたの、。僕何かしたかい?」
「アレルヤは何もしてないかな。あたしがこれからするんだし」
「?何をするの?」
大きな図体に似つかわしくないほど愛らしい仕草で、アレルヤは首を傾けた。
目一杯背伸びしてそれでも足りずに、少し屈んでもらってから意外に柔らかい髪を撫でると、年下の彼は猫か犬のように眼を細くした。幸せそうな様子に思わず顔が綻ぶ。
は彼を、初めて会ったときから弟のように可愛がっていて、アレルヤもそれを自然に受け入れていた。
はアレルヤの頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でて、それから短くあのね、と切り出した。
「嘘をつこうかと思うの」
突然の告白に、アレルヤは面食らった。まともな返事は到底できずに、まごまごと尋ねる。
「えーと、・・・それはどうして?わざわざ宣言してつかなきゃいけないの?」
「アレルヤにつく気はないのよ。アレルヤは一緒に考えてくればいいの」
「一緒にって・・・どうして巻き込むのさ」
「どうしてって・・・貴方今日何の日か知ってる?エイプリルフールじゃない。今日つかなくていつつくのよ」
そこまで言われてアレルヤはようやく納得した。要するに、今日がエイプリルフールだからそのための嘘を一緒に考えろと言うのだ。
アレルヤ自身はその手のイベントには無頓着なために、今日がどういう日か忘れていたが、何かにつけイベントの好きな彼女はしっかりとそれを覚えていたらしい。
しかしのそんな要請は、元々嘘が苦手で正直にものを打ち明けるアレルヤにしてみればかなりお役に立てないものだった。
「そういうのは僕じゃなくてロックオンに訊いたほうがいいと思うんだけど」
アレルヤはマイスターの中で最も年嵩の男の名前をあげた。
ロックオンが決して嘘つきだと言っているのではなく、彼ならもっと気の利いた嘘の一つや二つ持っていそうだと思ったからだ。
刹那はないだろう。自分と同じように嘘は言わないか、そもそもそういう浮ついたような行事に興味はない。
そう思ったがは緩く頭を振ってみせた。ロックオンでは不足だと言いたげだ。
「ダメよ、ダメダメ。ロックオンじゃ軽すぎるわよ。アレルヤじゃないとダメ。優しいのじゃないとダメよ。しかも嘘だってバレバレのやつ」
「バレてもいいの?そもそも誰にそんな嘘を吐く気なの?」
はうふ、とコケティッシュに微笑んだ。
「ティエリアよ」
アレルヤは即座にあの気難しそうに引き結ばれた唇の同僚の顔を思い浮かべて、さっと顔色を悪くした。
嘘には、というか、不正なことに非常に敏感な彼はきっと騙されたと知れば烈火の如く怒るだろう。に悪気はなかろうとそんなことは問題ではないはずだ。
「やめた方がいいんじゃないかな・・・。ティエリア、嘘つかれたと知ったらきっと物凄く怒るよ」
「何よぅ。恋人がエイプリルフールだからその行事に乗っかって、可愛い嘘をつこうってのがそんなに悪いことなの?」
「僕はのためを思って言ってるんだよ」
「ティエリア、そんなに怒ったりしないわ。昔と違うんだから。優しくなったんだから」
確かに昔のことを思えばあの物腰の柔らかさには目を瞠るものがあるが、かといって彼の嫌悪するものが変わったわけではない。
やっぱりつまらない嘘をつくと溜息を吐かれるし、時間に遅れようものなら小言を言ったりする辺りは4年前とほぼ変わらない彼の習性だ。
ただその当たりが少し柔らかくなっただけで、沸点は同じところだ。
それでも、アレルヤにとって空白の4年間はにしてみれば彼は総合的に見て“優しくなった”と評価に値する変化を見せたのだろう。
アレルヤには未だ不安要素の残る彼の応対だが、はにこにことどんな嘘をつこうかと考えている。
さてどうしたものかと考えを巡らせていると、後ろから不意に声をかけられた。
「廊下の真ん中で突っ立ているな」
はきはきとした冷たい声に聞き覚えがあった。
あ、と呻いて自分の体格の良さを自覚しているアレルヤはさっと体を寄せたが、は身を引くよりも今話題になっていた人物の登場に眼を輝かせた。
「ティエリア」
「君までいたのか・・・。通行の邪魔になるからせめて横に寄れ」
溜息混じりの忠告を無視して、がティエリアの腕を引いた。
浮き立った身を器用に捻ってティエリアの傍に立つ。
「ねねね、今日何の日かティエリア知ってる?」
「知らない。何の日だ」
短く返し、ティエリアがアレルヤを見遣る。
如何にも答えを求めているかのような紅い視線に、アレルヤは片眉をあげて見せた。
「エイプリルフールだよ。嘘をついてもいい日」
ティエリアが、ああ、と小さく呟いた。
どうやらその習慣自体は知っているようで、納得したように数度頷いている。四月馬鹿か、とさえ呟いているので一定の知識はあるらしい。
ティエリアはしかし、眉を不可解に寄せて更に尋ねた。
「でもどうしていきなりエイプリルフールの話になる。まさか二人して僕を騙そうとしていたんじゃないだろうな?」
「え、いや・・・そんなまさか・・・」
「そうよ。ティエリアに嘘をつこうと思ってアレルヤに相談してたのよ」
「ちょっと、・・・」
言い澱んだ自分を尻目にずばずばと真実を告げる彼女に、アレルヤは瞠目した。
それじゃあ僕は共犯じゃないか。
まだ嘘の案すら出していないというのに、彼女の中ではすっかり共犯扱いになっている。
そんなの了解した覚えはないし、そもそも自分が共謀する意思を見せたことは一切なかったはずだ。
相変わらずの強引さにアレルヤははらはらとした気持ちでティエリアの様子を窺った。
ティエリアはその視線に気がついて、緩く菫色の髪を揺らした。
少し意外なことに、ティエリアは自分がこの件には関与していないことを把握してくれているようだ。視線で労いをかけられて、アレルヤは困ったように微笑んで見せた。
「あまりアレルヤを巻き込むな。嘘をつきたかったのは君だけだろう」
「だって楽しい嘘つきたかったんだもの」
子供のように頬を膨らませるに、恐らく幾分か年下であるはずのティエリアが大人のように諭す。
「何?楽しい嘘?」
「そう。あたしティエリアが喜んでくれるような嘘が良かったの。ティエリア、楽しくて笑うことってあまりないでしょ?昔よりはよく笑うようになったし、柔らかくはなったけどやっぱり難しい顔してることの方が多いんだもの」
「今の状況では、気楽に笑うことなんかできないだろう。なあ?」
「え?」
二人の会話に入らずそのやり取りだけを見ていたアレルヤは、不意にティエリアに同意を求められて困ってしまった。
確かに何かと気楽に笑ってはいられない最近の情勢ではあるが、些細なことで笑えないほど余裕がないわけでもない。
曖昧に頷いては見せたものの、ティエリアを楽しませたいというの想いを理解している身としては彼女の言い分の方にこそ頷いてやりたいものだ。
先程の気勢とはかけ離れた様子で肩を落とす彼女を見遣り、アレルヤは言葉なくその肩を叩いた。
ゆらりと頭が動いてこちらを見上げる。やっぱりね、と力なく微笑んだ顔に諦念が見える。
ティエリアは何か言いたげだったが何も言わない。それでも何か彼女を落ち込ませることを言ったと悟っているのか、紅い瞳を頼りなく瞬かせた。
助けを請うような視線に、アレルヤはティエリアにそっと耳打ちした。
「の言った通りだよ。は君が笑ってくれるような嘘で君を和ませてあげたかっただけだ」
「気遣いはいらん」
本人にそのつもりはないだろうが、突き放したような一言にアレルヤは首を横に振った。
「・・・違うよ。ティエリアは彼女が嫌いなの?」
「嫌いじゃない。そうでなければ誰が交際など」
「じゃあ分かってあげなよ。はこんな行事を引っ張りだしてまで君の笑顔が見たいんだよ。ただ単に君と楽しい思い出を作りたいだけなんだ」
「嘘をつけば思い出になるのか」
「その嘘で君が楽しいと思って笑えばね」
ティエリアはちらりとの方を見て暫く押し黙った。
見るからに脱力して落ちた肩に、はらりと長い黒髪が散る。明らかに落ち込んでいるその後ろ姿に声をかけられず、ティエリアはアレルヤに視線を戻した。
「そもそもは嘘を思いついているのか?」
「いや、それは全然。思いつかなかったから僕に相談したんだよ」
「普段はあれだけ嘘が得意なくせに」
「・・・それは策のうちだから仕方ないよ」
それにその作戦上の嘘と、ティエリアにつこうとしている嘘を一緒にしてしまってはが怒るのは火を見るより明らかだ。
アレルヤは苦い表情で何かいい案はないかと考えを巡らせた。しかし思いつかない。
いっそハレルヤもいれば何か考えてくれるかと期待したが、今その彼はおらず、いたとしてもアレルヤや周囲が右往左往するのを面白がってみているだけなんじゃないかという可能性まで生まれている。却下だ。不在の半身を頼るのも情けなさすぎる。
一方でティエリアの方はというと、アレルヤの苦悩も知らずに徐にに近づいていた。
「おい」
「わ!なに!びっくりした!あ・・・」
突然の呼び掛けに思い切り飛びのいたは、反動で宙に浮きあがった。
重力の枷から外れた身体は容易に空間を漂い、その距離を離す。それを手を伸ばして捕まえたティエリアが、引いた腕の力だけで距離を一瞬で詰めた。
触れた手。掴まれた腕は衣類で覆われているのに、その体温は直に触れられているんじゃないかと思えるほどの熱を持っていた。
至近距離でみつめる紅玉の瞳に鼓動が速まる。
ああ、なんて綺麗。
顔に血が上るのが分かる。顔が熱い。
反らせずにいるとティリアは薄い唇を小さく開いた。
「嘘。そんなにつきたいか」
殆ど睨むようなその眼差しに怯みそうになるが、ただ尋ねられた一言にこくこくと頷く。
「はい。つきたいです」
「・・・分かった。じゃあ僕の言葉を復唱しろ。口調だとかは好きに変えろ」
ふぅ、と諦めたように息をついて、彼は眼を伏せた。
ティエリアの言葉を復唱することが嘘をつくことと何の関係があるかは分からない。しかし、恋人の言うことだから、とは大人しく彼の言を待った。
数刻たっぷり沈黙して、ティエリアは面を上げる。
いいか、と訊いてが頷いた。
「僕は」
ティエリアが最初の言葉を呟いた。
は慌ててその後を追う。
「“あたしは”・・・」
何を言うんだろうと疑問に満ちた瞳でティエリアを見詰める。
しかし彼は視線で問いかけを遮り、言葉を続けていく。
「君が」
「“貴方が”・・・?」
「嫌いだ」
「きら・・・い、ってえええ?」
何てことを言うんだと取り乱すに、ティエリアはふん、と鼻を鳴らした。
いかにもな仏頂面で、彼はその反応を面白くもなさそうに見る。
「なんだ。言わないのか?僕が自ら案を出してやったのに」
「だって、そんなの・・・嘘でも言えないわよ。傷つくじゃない」
「嘘だという前提なんだから構わない」
「だって・・・」
せっかくの提案に釈然としない様子の彼女に、ティエリアは不可解そうに小首を傾げた。
一部始終を見ていたアレルヤは、そのなんとも言えない空気からいっそその場から消え去りたい気分になった。
要するに、が“嫌いだ”と言ったとしてもそれは絶対に本心ではないとわかっているのが前提だ。その言葉の裏を返せばそれは、愛を告白していることに相違ないという訳だ。
彼女と彼の関係を見ればそれは当然嘘として受け取られる言葉だ。ティエリアはそれを分かってその嘘を提案していたのだ。
「ああ、僕ここにいない方がいいんじゃないかな・・・」
だってだってと繰り返すに力なく言うと、がしっと信じられないほどの力で腕を掴まれてしまった。
やめてくれ、僕はここにいたくない。
「ダメ!ここにいて!嫌よ!ティエリアが嫌いだって言えって言う!」
「だから嘘なんだから本気にしないって言っている」
「嫌!嘘でも言わない!嫌いになったときしか言わない!それに言えない!」
「妙に誠実だな」
「当たり前よ!」
淡々と応答するティエリアと、嫌だ嫌だと首を縦に振らないに挟まれたアレルヤは、以後4月1日には決してこの二人の前に姿を現さないことを心の中で堅く誓った。
終わらない問答を近くでありながら遠くで聞きながら、アレルヤは力なく項垂れた。
この騒動こそ嘘にしてくれ、と未だ見ぬ神に祈る。
いっそなくしてくれたらどんなにいいか。
賑やかな声はやまない。
ほどなくして通りかかったロックオンに連れられては去った。
ティエリアも僕は疲れたとかなんとか言ってその場を後にした。
残されたアレルヤはぐったりした様子で、暫くその場に立ち尽くしたが、やがてのそのそと動きだしてアリオスの整備に向かった。
終わったのは腹の虫が鳴く頃。体力面でじは超兵として必要以上に鍛えられた肉体なので疲労らしきものは見いだせない。しかし気の疲れはどうにもならない様だった。少し気だるい身を引きずるようにして食堂に入ると、先に来ていたらしいティエリアが飲料水のボトルをアレルヤに手渡してくれた。
「今日は悪かったな」
ティエリアが申し訳なさそうに謝った。自覚があったらしくその表情は困ったように陰っている。
ボトルを受け取りながらアレルヤは、苦笑した。
「いいよ。仕方ないさ。のお願いだからね。構ってもあげるさ。・・・で、あの後ちゃんと嘘は思いついたみたいだった?」
「いや。さっぱり思いつかないらしい。結局嘘は来年に持ちこしだと言っていたな」
「来年か・・・また随分先だね」
まあ1年もかければ十分な嘘も見当たるだろうと、アレルヤは頷いた。
その時に巻き込まれさえしなければいいのだ。彼女にはたっぷり悩んでいい嘘を見つけてほしいものだ。
アレルヤはそう納得したが、ティエリアの方はどこか頼りない様子で繰り返した。
「そうだ。来年だ・・・」
「ティエリア?」
手にしたボトルをぎり、と引っ掻くようにして握り、彼は重々しく囁いた。
「明日をも知れない身で、来年もまた僕と一緒にいる気で、そういうことを言うんだ」
ボトルの中で水が踊る。
「明日、僕らが生きているとは断言できない。未来の理想はあるが、それは現実として今手には掴めない。明日、いや、今日にも僕かのどちらかが死ぬかも知れない。死なずとも永遠の別れを迎えるかもしれない。そういう組織だ。僕らは戦争をしている。この一秒後のこと、ましてや遠い一年後のことさえ分からないんだ」
呻くような独白にアレルヤははっと息を呑んだ。
そうだ。僕らは世界を相手どって、戦争根絶などという大それたことをしている。彼の言うように明日は知れない身だ。正直約束を守れない、なんてことは言葉にしなくても常に心のどこかで感じていることだ。
なのに、それを知って彼女は来年だと言ったのだ。
誰よりもその無常さを知る彼女が。
ティエリアは返事はできなかったと、言葉を続けた。
「守れないのに・・・」
「そんなことない!守れるよ、なら!」
居た堪れなくなって、アレルヤはティエリアの言葉をかき消すように叫んだ。
食堂に誰もいなくて良かった。いきなりこんな声を聞かれようものなら、首を突っ込まれて話は流されてしまっただろう。
アレルヤは頭を振った。
「来年だってきっと君たちは一緒にいるよ。守れないなんてことない。はそれを嘘にはしないよ」
「それが嘘なら来年つく必要はなくなるな」
「何言ってるの。はそんな嘘なんかつくはずない。それは僕よりも君が知ってることじゃないか」
自嘲気味に笑うティエリアを否定する。
そう、知っているはずだ。
誰よりもお互いが一番近い存在のはずなのだ。それを分からないはずがない。
ティエリアは迷うように視線を揺らしたが、アレルヤは彼の肩に手を置いて安心させるように笑った。
「大丈夫。は誠実だって、君さっき言ったじゃないか」
ティエリアが紅い眼を丸くしてアレルヤを見詰めた。
陰った顔に光が射したように、その顔が明るくなっていく。
暫く黙ったままアレルヤを見ていたティエリアだったが、やがてこくんと力強く頷いてみせた。
「そうだ。は誠実だ。きっと守ってくれる」
「うん。来年の約束を守れるように、君が彼女を守ってあげればいいんだよ」
「そうだな・・・約束を嘘にはしない。させない。絶対だ」
晴れやかに微笑むティエリアを見て、アレルヤもつられて唇の端を上げた。
そう、来年だ。
きっと来年も二人は一緒にいる。
アレルヤはそう、祈りに近い確信を湛えて微笑んだ。
未来にきっとその約束は守られる。そう信じなければ戦場には立てないと、彼らは無言のうちに頷きあった。
イカサマ師の誠実
4月も終わり間際にやっと終わりました。
一応4月中に完成が目処だったし問題はないはずです!良かった!
うっかりアレルヤを出しすぎたので裏タイトルは「アレルヤ・ハプティズムの悲惨な四月馬鹿」でいいと思います(笑)
(2009/04/26)